DELTA-NU'S HIGHSCHOOL REUNION |
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「原作は『メッセージ・イン・ア・ボトル』のニコラス・スパークスの長編小説『奇跡を信じて』。泣けるんでしょ? それよか監督はあの『シーズ・オール・ザット』の傑作プロムシーンの振り付けを担当したアダム・シャンクマン、うひょひょ」てなノリで観賞した『ウォーク・トゥ・リメンバー』。ところが、100分後には頭を鈍器で殴られたような、今後の人生に大きく影響を及ぼしかねないほどのショックを受けてました。 ![]() 完璧な夏を過ごすランドンとジェイミー。ってコレは劇中のショットではありません。何やってるのオマエら!?
両親の離婚に傷付き、愛や人生に対して懐疑的だったランドン・カーター(シェーン・ウェスト)は、学園内では派手な友人に囲まれてはいたものの、反抗的で何の希望もない生き方をしていた。素行不良から罰として演劇部の公演に参加することを命ぜられたランドンは、その舞台で学園一の地味少女ジェイミー・サリバン(マンディ・ムーア)と共演することになる。ジェイミーは牧師の娘で信仰に重きを置く少女で、ランドンとは何の接点もない生き方をしていた。ところが時間を共有するうちに、滅茶苦茶ダサい服の向こうに隠れた透き通るような美しさと純粋で強い意志に気が付き、次第にジェイミーを想うようになるランドン。そして最初は戸惑いながらも、真直ぐにランドンの想いを受け止めるジェイミー。恋に落ちたふたりを妨げるものは何もないと思われたが、ジェイミーはランドンに重大な秘密を隠していた。自分が不治の病〈白血病〉に侵されていることを―― ってまず、コレは21世紀の作品ですよ、念のため。「そんな昔の少女漫画みたいなアホらしい話聞いてらんない」という人はこの時点で読むのを止めていただいて結構。たしか小学生の頃、マッチ&明菜主演でこんなの観た記憶があるのだが(『愛・旅立ち』?)、ワケあり不良少年と白血病の美少女の純愛ですよ! こんな脚本が通ってしかも大ヒットしちゃうんだからアメリカってどうかしてる、いや素晴らしい国ですね。 ![]() 自分の名前の付いた星を見上げるジェイミー。死相メイクもバッチリ
「私のことを好きにならないと約束して」(←この台詞もスゴいけど)と言われて「大丈夫、それは絶対にない」とか笑ってた男が、今度は同じコから「死ぬのは怖くない。怖いのは、あなたを失うこと」と言われて「それは絶対にない」って……ホントどうかしてます。一生に一度の恋を知った人間はここまで強くなれる(『パンチドランク・ラブ』です)ってことなのでしょう。自分の人生に一本の道がはっきりと開け、ここからのランドンときたらそれこそアダム・サンドラーばりの無敵状態。ジェイミーに残された時間の中で彼女の願いを叶えるためにあらゆる努力をし、そのすべてを結実させていく。そして発狂確実のプロポーズ&ウェディングシーン……ホントどうかしてます。ついでに崩壊していた家族や友人との絆も取り戻す御都合主義ぶり。その間、われわれの涙腺は〈崩壊〉したまま回復することはありませんが。 ![]() 「はい、ジェイミー役のマンディ・ムーアです」ギャルとしての打点の高さは学園シンデレラストーリーの傑作『プリティ・プリンセス』でも実証済み
それにしても、本作の精神性を実生活にフィードバックすることは、あまりに不合理かつ危険なことにも思えてしまう。「誠実で真直ぐな想いは必ず伝わる」なんて現実の世界で誰が言い切れようか。『ウォーク・トゥ・リメンバー』は安易に他人に薦めてはいけない1本なのだ。と同時に、フィードバックしかねない人にこそ薦めたい1本とも言える。それ故、理知的な大人なら泣くだけ泣いて本作に〈フタ〉をしてしまうことだろう。「それでもこんなの探し求めてたら生きていけないから、私は現実を生きます」と。 たしかに世の中せちがらい。誕生日やクリスマスを独りで過ごすことに怯える人もいれば、流行のスポットやファッションに立ち遅れまいと必死に努力する人もいる。対世間的に〈イケてる〉とされるものをすべて放棄して生きていくには相当な勇気が必要だ。ランドン・カーターの愛には打算や駆け引きが一切存在しない。相手のすべてを受け入れ、自分のすべてを与える。これは並じゃなくハードルの高い〈無敵の境地〉であると同時に、〈結実しなければ廃人逝き〉という事態にもなりかねない、ある意味危険な精神状態でもある。〈恋に臆病な〉という表現がよく使われるが「大きく傷付くようなリスクは負いたくない」のであれば、ランドンなんて志すものではない。それでも、映画のなかでは一片の曇りもない無償の愛の存在を信じ、涙して、現実の生活では合理的に恋愛と付き合っていくなんて何と悲しい生き方だろうか。ランドン・カーターの愛はハウツー本では決して手に入れることはできない、過酷な道のりである。それでも、その過程や行き着くところで得られるものの大きさも特別なのだ。なにせランドンは、ひとつの恋愛で「多くの人の一生分を上回る愛に包まれ」たのだから。 ![]() 今は亡きジェイミーを想うランドン。「彼女に奇跡は起きなかった……」ってオマエが奇跡だよ!
「ひとりの生命に残された時間があとわずかしかない」という本作の特殊な状況設定によって、ふたりの愛がドラマティックに映り過ぎていることは否定できないが、〈ランドン・カーターとして生きること〉は我々にもできるのではないだろうか。少なくとも「人生のなかでそんな相手と巡り会いたい」と誰もが願っているのでは? ボクはそう信じたい。〈お話のなかでの事〉とはいえ、ランドンとジェイミーの純愛に感動したり、「『アリーmyラブ』ならジョン・ケイジが好き」という女子が少なくないという事実は決して無視できるものではないのだ。現実に折り合いを付けて生きていく理知的さも必要だが、誰もが〈お話のような〉現実の恋愛を手に入れたいと願ってもいる。おそらくそれは、本作のように良い意味でも少女漫画的な、分かり易く第三者に伝わるような形態のものではないのだろう。それはちょうど『マグノリア』のラストシーン――自分の愛情に一筋の光を見い出したジョン・C・ライリーが投げ掛ける言葉と、それを受けて、愛情や人生に絶望していたメローラ・ウォルターズが最後に見せるカメラ目線の笑顔のように、それくらい歪(いびつ)で、それでいて確かなものであるに違いない。 あなたは突然現れて わたしの心を奪う ピーターパンのように スーパーマンのように あなたは現れる わたしを救うために さあ早く わたしを救って |
『ウォーク・トゥ・リメンバー』(2002年:アメリカ)監督:アダム・シャンクマン 脚本:カレン・ジャンセン 出演:シェーン・ウェスト、マンディ・ムーア、ダリル・ハンナ、ピーター・コヨーテ |
| 郷原紀幸(DELTA-NU) 執筆時BGM “Only Hope”/Mandy Moore、“He Needs Me”/Shelley Duvall、“Save Me”/Aimee Mann |